倉庫のリノベーション  
「オブレロ」とはスペイン語で労働者を意味し、ブランドのコンセプトはあらゆる職業に従事する労働者から喚起されるイメージをもとにつくられている。原宿から渋谷に向かう明治通 り沿いの喧噪が途切れるあたりの裏道に建つ倉庫を、ブティックとレストランの複合店鋪として改築した。そしてもともとの倉庫の構造物をできる限り残したリノベーション計画でもある。外観は一部」明治通 りからのぞき見ることができるが、その存在を印象づけるため、欧州の駅舎を連想させる大きな開口部を配した。また、レストランのテラス席のにぎわいを見せることも重要であった。  

1階の一部と2階は物販スペースで、メンズウエアとレディースウエアをともに展開している。販売上特にそれぞれはコーナー分けされていない。服づくりのコンセプトは、服飾文化において普遍的とされているものを大切にしながら、1930年代から1950年代を中心とした世界各国のジャケットやスーツ、そしてワーキングウエアのどをモデルにし、「オブレロ」風オリジナルスタイルにアレンジしている。店内でまず目を引くのは、3段掛けのハンガーラックシステムと、露出した空調用ダクトだろう。ハンガーラック最上段は見せるストックスペースとして利用されている。ダクトは亜鉛メッキをブラスト加工、壁面 のスティールパネルも溶接ポイントやジョイントを現場にてサンダー掛けし、職人の手の跡を残した。床材は古材を利用したが、塗装工事の途中に床面 に染込んだ塗料は拭き取らず、傷跡もそのまま残した。1階のレストランとの間仕切としてスティールサッシュのグリッドにはめ込まれた型板ガラスは曇ったままだ。  

レストランは、外部テラス席を有するイタリアンレストランで、店名の「リンコン デル オブレロ」とはオブレロの片隅を意味する。そして”オブレロで食事をしながら語ろう、オブレロに行ってちょっと一息”などの思いを込めている。まるで労働者が集い活気に溢れる食堂のように並列に配されたテーブルの上には、いずれ時間とともに傷跡が残されていくだろう。イメージビジュアルは、リバプールの工業エリアの板金工場や金属部品工場で働く人々を被写 体として、フォトグラファーのステファノ・マッセイ氏により撮影されている。  

衣食住全てにおいて、トレンドに迎合することのない独自の価値観を発展させる存在になるだろう。